専門用語ばかりでわからない
お見積り依頼やご注文されるお客様、これから本を作ってみたいけど、何からすればいいのかわからないという方は、是非こちらの「印刷豆知識」をご一読ください。
印刷物を構成する要素は多岐に渡り、それぞれが一般の方々には解りにくい用語であるため、作りたいものをどう説明すればよいのかわかりませんよね。お恥ずかしながら本サイトでも専門用語がたくさん使われています。それぞれの用語を解りやすい言葉で置き換えますと、とても長い項目名や説明文になってしまい、WEBページをご覧になること自体が辛いものになってしまいます。ここでは項目ごとにより解りやすい説明をさせていただくことにより、少しでも印刷を身近に感じてもらえたり、今までとは違う選択肢にも気づいていただければ幸いです。
少しだけ印刷の歴史を…
大昔からの流れをざっくり説明しますと、木版や陶器の活字(1文字ごとに作られた印鑑のようなもの)から金属の活字に発展し、有名なグーテンベルクによる活版印刷はこの金属活字を大量印刷に結び付ける発明ということになります。ここまでは凹凸のある版の凸にインクが付着し、それを紙などに転写する方法ですから、ある意味想像しやすい原理と言えます。次に発明されたのが平版印刷というもので、ほぼオフセット印刷という方式のことを表します。こちらは版に凸凹がありません。あるのは親水性のある部分と親油性(撥水性)のある部分です。親水性がある部分に水が付着し撥水性のある部分にインク(油)が付着します。これが水をはじくブランケットという中間転写体にインクのみが付着し、ブランケットから紙にインクが転写されます。活版は1度の転写なので版は逆像ですが、オフセット印刷では2度転写されるため版は正像になります。このオフセット印刷こそ、現代の印刷の主流となっています。
オフセット印刷における版の製造工程(以下、製版工程)もこの25年間で劇的に変わりました。これもざっくり説明しますと、アナログからデジタルへの転換ということになります。
アナログ時代は版を作るために、まずフィルムを作ります。フィルムを作るために版下を作ります。版下とは紙ベースの原版と言えるもので、この版下に文字や写真が切り貼りされていくのです。文字は「写真植字」という方法で綺麗な書体となって印画紙に出力され、写真は製版スキャナという機械で網点処理されて印画紙に出力されます。この網点処理とは写真などの濃淡があるものを連続階調と呼び、連続階調を印刷で表現するために必要な工程です。黒1色のインクで印刷する場合、グレーをいかに表現するかということに関わってきます。黒は黒にしか印刷されず、グレーを表現するためには細かな点描画のように面積の多い部分と少ない部分を離れて見れば濃淡があるように錯覚させるのです。新聞の写真部分をルーペで見れば解りやすいと思います。ここまでの工程で、印画紙・フィルム・版と3度に渡って銀塩処理が行われます。つまり光を当てることで感光体が反応し、現像処理をすることで顕像する(目視できる像が現れる)という化学反応を利用します。ざっくりのつもりが長くなってしまいました。アナログ時代の製版とはいかに手間がかかり、不安定なものであったかをご理解いただきたかったのです。
対してデジタル時代の製版は、パソコンによる「デスクトップパブリッシング(以下、DTP)」の登場と普及によってアナログ時代の各工程をそれぞれデジタル機器に置き換えていくきっかけとなりました。DTPの初期はパソコンで編集した文字や画像をレーザープリンターで出力することで、上記の「版下」工程を一気に簡略化しました。次にイメージセッターという機器が登場し、版下工程を完全に飛び越えて、パソコンの編集データを直接フィルムに出力することができました。次の革新は「コンピューター・トゥ・プレート(以下、CTP)」の登場です。このCTP機器によって編集データはフィルムを介さず、直接アルミニウムのプレート(板)に製版してしまうのです。これで、アナログ時代の銀塩処理3工程が1工程になりました。最近はサーマルプレートといって、露光による銀塩処理ではなくレーザーの熱で版を焼くことで顕像させるという製版システムが普及しています。しかし、印刷機で刷るという次の工程のためには「製版」という1工程が残るのは仕方がないことかもしれません。
デジタル時代のもう一つの潮流は「オンデマンド印刷」の普及です。こちらは従来の印刷機による版にインクを着けて紙に転写するという工程を、プリンターが置き換えるもので、当然「製版」工程がなくなります。家庭にあるインクジェットプリンターやオフィスにあるレーザープリンターと同じ原理で直接プリントするものです。当然のことですが印刷業界向けの機器は、品質・スピード・用紙対応力・ランニングコストを高次元で満たしています。逆にそうでなければ社会のニーズに合致せずに普及することもなかったでしょう。
現在、CTPによるオフセット印刷とオンデマンド印刷はともに主流であるといえます。なぜ共存できるかといえば、それぞれに得意・不得意分野があり、それを補いあう存在であるからです。オフセット印刷は製版をするために一定のイニシャルコストが発生しますが、印刷機が稼働してしまえばハイスピードで低ランニングコストになります。つまり1枚刷るのも10万枚刷るのもアルミニウムの版が1枚必要であり、ロットが大きければ大きいほど有利であると言えます。対してオンデマンド印刷は製版の必要がないため少ないロットでも低コストで印刷できますが、ランニングコストはオフセット印刷よりも高くなります。製版コストを印刷枚数で割り算をして、ランニングコストの差額と比較すれば、どちらで印刷をすれば良いかという分岐点が見えてきます。これがざっくりとした住み分け方です。実情は用紙のサイズや材質、黒ではなく特色での印刷の必要性によって小ロットでもオフセット印刷に頼る場面が多々あります。
以上がおおまかな印刷の歴史ということになります。弊社ではCTPによるオフセット印刷とオンデマンド印刷の双方に対応しておりますので、お客様のニーズや印刷内容によって、最適な方法を選択することができます。併せて年代物ではありますが、ドイツのプラテン印刷機が現役で稼働しております。これは活版印刷機ですが、金属活字は生産されていないため、樹脂製の凹凸のある版をフィルムから焼き付けることで製版して使っています。ニッチな用途にしか使われなくなりましたが、和紙の色紙印刷や複雑な形状のミシン目を入れたり、印字面が少し版に押されて沈む風合いなど、この印刷機にしかできないこともあり、重宝しています。
紙の種類はさまざま
印刷をするために欠かせないのが紙です。お手元にある紙の銘柄・色の名前・厚さを的確に説明できる方はそう居ないと思います。印刷業界の熟練営業マンですら、紙の見本帳と比べなければわからないものもあります。しかし、特殊紙を除いて一般的な印刷物に使われている紙は限られていますし、製紙業界を含めて、ある程度の規格やランク付けがあり、製紙メーカーの違いはあれど、おおまかな紙の種類は説明できます。
また、同じ銘柄の紙でも、厚みや仕入れる大きさの規格が違います。ほとんどの紙は厚みを「重さ」で表現します。仕入れる大きさの規格は、A判・菊判・B判・四六判という名前が主な規格で、とても大きな紙ですが、印刷会社ではこれを商品の内容や印刷機に合わせて断裁して使っています。この大きな紙を1000枚(=1連と呼びます)あたりの重量で表したものが連量であり、kg単位で厚みを表現しています。つまり、元の紙の大きさの規格によっては同じ厚みの紙でも連量が違うということになります。一般的な冊子の本文によく使われる上質紙もA判なら44.5kg、四六判なら70kgとなります。仕入れる紙の大きさが未定の場合などは、四六判換算で表現することが多くなります。仕入れる紙の大きさに頼らない表現方法として、1平方メートルあたりの重さをグラムで表した米坪という表現もあります。先程の四六判70kgの紙は米坪では81.4gになります。
寸法規格と連量および米坪の一覧を以下にまとめました。
寸法規格 | A判 | 菊判 | B判 | 四六判 |
---|---|---|---|---|
米坪 | 625×880mm | 636×939mm | 765×1085mm | 788×1091mm |
52.3g | 28.5kg | 31kg | 43.5kg | 45kg |
64.0g | 35kg | 38kg | 53kg | 55kg |
81.4g | 44.5kg | 48.5kg | 67.5kg | 70kg |
84.9g | 46.5kg | 50.5kg | 73kg | |
104.7g | 57.5kg | 62.5kg | 87kg | 90kg |
127.9g | 70.5kg | 76.5kg | 106kg | 110kg |
157.9g | 86.5kg | 93.5kg | 130.5kg | 135kg |
209.3g | 180kg |
以下のコラムに紙の種類ごとに用途やバリエーション等をまとめてみましたので、ご一読ください。
上質紙(一番使われている紙です)クリックで開きます
表題の通り、一番使われている紙です。そして名前に「上質」とあることから、高級な紙であるかのような印象を受けますが、日本の製紙メーカーがしっかり作っている紙なので、あたりまえのように「上質」であると言えます。需要の大きさに伴って生産規模も大きく、発注量も多いため、コスト面でも安く仕入れることができます。
主な用途は、書籍・チラシ・ノートなど多岐にわたりますが、主に単色刷りでペンや鉛筆などで書き込む用途に向いています。原料に紙パルプが100%使われ、表面に薬剤が塗布されていないので「非塗工紙」という分類になります。バリエーションとして再生パルプを使用した「再生紙」やバガス・ケナフなどの非木材を原料に使用した「非木材紙」もあります。再生紙は自治体などの発行物に使用されることが多く、非木材紙は市場規模が小さくコストが高いため、あまり出回っていません。
冊子の本文用として一番多く使われるのは四六判換算で70kgです。一般的なコピー用紙よりも少し厚く、両面刷りでも裏面の透けをあまり感じないこと、長期保存でもある程度の強度があることから、コストとのバランスが良いと思います。あまり長期保存の必要が無く、裏面の透けもある程度許容できる場合は55kgを使うことが多くなります。逆に、90kgとなると裏面の透けも気にならず、本に厚みを出したい場合などにも重宝されます。110kg以上となると、本文用としては硬く、表紙や1枚物の地図などに使われます。180kgはあまり使われませんが、ハガキや賞状などの用途があります。
家庭やオフィスで頻繁に使われることが多いコピー用紙(PPC用紙)は海外生産のものもあり、印字品質もあまり期待できません。厚みもメーカーによってまちまちですが、上質紙の55kgと70kgのあいだ程度のものが多いと思います。
色上質紙は上質紙とほぼ同じ製造方法ですが、名前の通り色がついた紙です。色のバリエーションや名前は製紙メーカーによって少し違うこともありますが、よく使われる色はだいたい統一されています。こちらは重さではなく「厚さ」で厚みを直接表現します。薄いものから順番に「薄口」「中厚口」「厚口」「特厚口」「最厚口」「超厚口」というバリエーションがあります。色はメーカーの見本帳から直接選んだいただくのが良いと思います。作文集など、特に高級感を求めない冊子の表紙には色上質紙の「特厚口」がよく使われています。本文の章変わりに使う仕切りなどには「中厚口」「厚口」がよく使われます。
目が疲れにくいように薄いクリーム色に着色された「書籍用紙」というものもあります。色味だけではなく長期保存によって紙は酸化し、傷んでいくものですが、製造過程で中性にすることで保存性を増しているものもありますが、メーカーによっては中性と謳っていないものもあります。
コート紙(カラー印刷によく使われます)クリックで開きます
上質紙が非塗工紙と分類されるのに対して、コート紙は「塗工紙」に分類されます。名前からもわかるように表面がコートされている紙で、艶を増したり、より白くするための薬剤が塗布されます。上質紙は性質上印刷インキを吸い込んでしまい、滲みもあります。インクを紙の表面にとどめ、白色度が高いコート紙はカラー印刷における色再現性に優れていますので、多色刷りの用途に向いています。インク乗りはそのままに表面をあえて艶消しにした「マットコート紙」もあります。
塗布される薬剤の多さによってランク分けされているのもコート紙の特徴です。1平方メートルあたりの塗工量が15g以下のものは微塗工紙や軽量コート紙とよばれ、大衆雑誌の表紙などに使われています。20gから30g前後のものが一般的なコート紙でベースとなる紙が上質印刷用紙のものが上質コート紙、中質印刷用紙のものが中質コート紙と呼ばれています。一般的なカラー印刷はほとんどこの規格の紙が使われています。塗工量が40g前後のものは「アート紙」に分類され、表面の平滑性が高く、白色度も高いため、美術品のカタログや博物館の展示目録などに使われています。
冊子の本文におけるカラー印刷には四六判換算で90kg前後の紙が使われていますが、巻頭カラーページなどには110kgや135kgの厚みが使われることが多いと思います。新聞折り込みのチラシなどには60kg前後、手配りのチラシには73kg前後、両面刷りでやや高級感のあるチラシは90kgや110kgの厚みがよく使われています。ポスターの場合、ほとんどが135kgの厚みを使います。
ノーカーボン紙(ビジネスの帳票によく使われています)クリックで開きます
手書きやドットインパクト式のプリンターの印字が2枚目・3枚目の紙に複写される伝票を見たことがあると思います。1枚目の裏にカーボンが塗布されて、それが転写されるものもありますが、現在はほとんど見かけなくなりました。一見、裏面には何も付いていないのに複写される用紙をノーカーボン紙と呼びます。これは複写用紙の上の紙の裏面に顕微鏡レベルの小さなカプセルが付着しており、筆圧などでカプセルが潰れると中の薬剤が出ます。この薬剤と下の紙に塗布された発色剤が反応して色が目に見えるという化学反応を用いています。2つの薬剤が混ざることで発色するため、ノーカーボン紙を普通紙の上に置いても発色することはありません。また、ノーカーボン紙は用途によって上用と中用と下用に分かれており、上用には裏面にカプセルが、中用には表面に発色剤・裏面にカプセルが、下用には表面に発色剤が塗布されています。例えば3枚複写の伝票なら、上用・中用・下用の順番で用紙が変わりますし、4枚複写の伝票なら上・中・中・下という並びになります。2枚複写なら上・下ということです。上用同士・下用同士を重ねても何も写らないし、中用なら筆圧が届く限り何枚でも移ってしまいます。
ノーカーボン紙は紙の厚さを表現する単位も独特です。一般的な伝票にはN40という厚みが使われます。コピー用紙などに比べて薄く感じます。領収書や預かり証など、渡した相手方の手元に残り、簡単に破れては困るものなどはN80という厚みが多く使われます。その中間のややしっかりした厚みとしてN50・N60があります。もっと厚みのある領収書や複写した内容をハガキとして利用するなど、特殊な用途向きにN100・N130・N160というバリエーションもあります。
厚み以外のバリエーションとして、複写されたときの発色が青いものと黒いものがあり、紙の色も白以外にピンク・クリーム・アサギがありますが、全ての厚みで選択できるわけではなく、上用・中用ならN40のみ、下用ならN40とクリーム色のみN100・N130があります。
基本的にノーカーボン紙は紙の隅々まで複写されますが、納品書などに受領書を付ける場合などは価格欄の代わりに受領印欄を設けて、その部分には価格が複写されないようにしたい場合もあります。このように部分的に写らないように「減感」という加工をすることもできます。これは無色透明な減感インクを写ってほしくない部分に印刷することになり、印刷としてはプラス1色を刷ることと同じコストが掛かってしまいます。
特殊紙(他にも色々あります)
市場規模は大きくないものの、世の中の色々なニーズにこたえるため、様々な紙があります。和紙は独特の風合いがあり、賞状や名刺や披露宴の配席表など特別な場面で高級感を演出することに重宝されます。特殊な模様が入っていたり、表面にエンボス(凹凸)加工がされていたりと、本の表紙として高級感を出したり、ショップカードや案内状など特別な演出をしたい場合などに用いられる紙もあります。屋外ポスターのように濡れても傷みにくいように樹脂の表面に印刷に適した加工を施したものもあります。それぞれ代表的な銘柄はありますが、上質紙やコート紙に比べて大変高価なものです。また、仕入れる単位がそれぞれにあり、効率の良いロットが存在します。使用目的や数量に合わせて、また用紙見本も確認して特殊紙を選んでいただきたいと思います。小ロットの場合は、弊社の在庫から選んでいただくことも可能です。まずはご相談いただければと思います。
自分だけの本を作りたいあなたへ
あなたはどんな本が作りたいですか?ご自分がこれまで紡いできた人生を「自分史」にまとめてみたいですか?趣味の俳句を綴ってみたいですか?研究成果を1冊にまとめてみたいですか?そのどれもがご自身の分身となって読んでもらいたい方々の手元に残ります。内容を考えるのは大変ですが、自分自身の想いをまとめあげることはとても有意義な時間です。弊社はその素敵な作業のお手伝いをさせていただきたいと考えています。
本を作るうえで完成形をイメージすることはとても大事なことです。編集・印刷を経て、最終の仕上げである「製本」について知っていただければ、あなたの本づくりにきっと役に立つと思います。
一言で製本と言ってもイメージが湧きませんよね。簡単に言えば「複数の印刷物をまとめて綴じる」ということになりますが、「綴じる」方法にも色々あり、それに応じてまとめ方が変わります。
綴じ方は「平綴じ」「中綴じ」「無線綴じ」「糸かがり綴じ」「のり綴じ」「リング綴じ」が主な方法です。
「平綴じ」と「中綴じ」はともに針金で綴じる方法で一般的にはホッチキスのイメージですが、印刷業界向けのものは針金の強度も強く厚みのあるものを一気に綴じることが可能です。平綴じ・中綴じは針金を冊子のどこに通すかによって変わります。印刷された用紙をページの順番にまとめる工程を「丁合(ちょうあい)」と言います。A4サイズで20ページの冊子を平綴じするの場合、紙の表と裏を2ページとするとA4サイズで10枚分丁合し、紙の上から針金で(通常は2個所)綴じます。当然、綴じられた部分から紙の端まで(綴じしろ)は冊子を開いても見ることができない部分となります。中綴じの場合は、A4の倍の大きさであるA3サイズの印刷物を5枚丁合し、紙のど真ん中を針金で綴じた後に2つに折ります。これでA4サイズ20ページの冊子が出来上がりです。中綴じは綴じしろが無いので、冊子を開いたときに綴じ側まで見ることができます。デメリットは4の倍数ページで冊子を作らなければいけないということですが、メリットは最も低コストで製本できるということになります。平綴じは一般的には伝票類の綴じ方として用いられる方法で、針金を隠すために冊子の背にクロスや紙テープを貼って仕上げます。中綴じはカタログや会社案内など、ページ数があまり多くなく、発行部数が多いものに用いられています。
「無線綴じ」は針金や糸を使わずに、本の背の部分に糊を着けて表紙を貼る方法です。「中綴じ」に比べてページ数の多い冊子に向いています。また、「平綴じ」に比べて本の「ノド(本の綴じしろ側)」まで開きやすいため、文庫本や研究論文・報告書などにも使われている綴じ方です。表紙は最後の工程で糊付けされるため、中身(本文)のみを丁合します。ある程度の厚みがあれば背文字を入れることも可能ですから、自分史や句集などにも向いています。比較的低コストで製本できますが、表紙を凝った紙にしてみたり、箱に入れることで高級感を演出することも可能です。デメリットは綴じ部分の強度です。熱で柔らかくなる糊を使いますから、高熱を当てることで表紙が剥がれやすくなります。後で説明させていただく「糸かがり綴じ」に比べて落丁しやすいのも事実です。ただし、厚みのある本の特定のページだけを何度も見たり、無理やり180度開くように強引に引っ張るようなことをしないかぎり、簡単には抜けないと思います。本文を丁合し、その背の部分をわざとギザギザに削り、糊が浸潤しやすいような加工(ミーリング処理と言います)をした後で糊と表紙が着けられます。このミーリング処理のために本文のノドは2~3mm程削り取られますので、削りしろを見越して大きめに印刷をすることになります。もしも、お客様が規格サイズぴったりの本文をご自身で用意され、弊社に持ち込み製本をご依頼された場合、この削りしろの分だけ仕上がりサイズは短くなりますのでご了承いただかなければいけません。もうひとつ注意点があります。美しさを優先するため、仕上げサイズよりも少し大きな紙を用いて印刷・製本をし、最後に「化粧裁ち」という工程があります。例えばA4冊子の場合、A4ぴったりの大きさで丁合をして表紙を付けても微妙に紙の端は綺麗に揃いません。断裁機の誤差や湿度や気温による紙の伸縮などの要因によって、A4サイズそのものにブレが生じるためです。そこで、食パンのミミを落として綺麗なサンドイッチを作る要領で、少し大きめに製本された本を最後に断裁機で綺麗に「化粧裁ち」するわけです。つまり、仕上げサイズで持ち込まれたものを製本すると「化粧裁ち」ができないため、綴じしろ以外の3方はツルッと綺麗に揃っていないことになります。
「糸かがり製本」とはまさに糸で綴ることで製本します。一般的には中綴じ製本と同様に16ページ単位で紙をまとめて中央を糸で固定し2つに折ります。120ページの本であれば、16ページの糸かがり製本が7台と8ページの糸かがり製本が1台が束ねられることになります。束ねられた綴じしろ部分に糊で厚紙や布などを貼り付けて固定します。この方法は見開きページを大きく開くことができ、強度も高いことから、高級な本には多く用いられています。この方法で束ねられた本文にハードカバーの表紙を付けたものが「上製本」と呼びます。よくWEB印刷で上製本をアピールする業者がありますが、多くはハードカバーが付いていることを「上製本」と定義付けしているようです。弊社では「糸かがり綴じ+ハードカバー」であることを上製本としてお客様に提供しておりますのでご安心ください。なお、中綴じ製本と同じように4ページ単位であることがページ数の制約となり、理想は16ページ単位であることが糸かがり製本での効率の良い、強度の高い条件と言えます。「ハードカバー」とは本文より少し大きく、厚手の紙に印刷された表紙を貼りつけている表紙のことです。布などの特殊な素材を貼りつけたりもできますし、金や銀の箔押しされたものもあります。カラーの印刷物を貼る場合は、長期保存の観点からPP貼り加工をして、擦過耐性を高めることをお勧めします。スピンといってしおり紐を付ける加工が一般的です。ちなみに、「上製本」に対して前述の無線綴じ製本を「並製本」と呼びます。
以上が主な製本方法ということになりますが、追加的な仕上げとして、ブックカバーを巻いたり、箱に入れるといった方法もありますので、細かな仕様はお客様と打ち合わせをさせていただくことになります。